初老のご婦人が二人会話をしている。「ついこの間60歳になりましたの。」「まあ!とてもそうは見えません。お若いこと!」この最後の一文 “You are young!” と言ってしまったら、険悪な雰囲気になること必至。もっと年上かと思ったのに意外に若いのね、の意味になるからだ。褒めたいんだったら “But you look so young!” と言わなくてはいけない。社会人になりたての新人に「若者は元気で良いな」のつもりで言っても「おまえは未熟者だ」に聞こえることがあるので要注意の一文なのだ。
3年くらい前から急に流行って今や定番化した感のあるスキニー・ジーンズ。衣服が体にぴったり添うほど細いことを skinny というのだが、a skinny girl のように人に使ってしまうと貧相なほどのやせっぽちのことになる。褒めたいのなら優雅にほっそりしていることを意味する slender の方が良い。体型 figure を形容するのなら slim や健康的に引き締まったことを意味する lean 等も使える。
普段なかなか口に出来ないような美味しいものを食べさせてあげようと連れて行ったレストラン、一口食べた相手が “Wow, this is wicked!”「嫌だ、まずい」ではない、「すごい、美味しい!」の方だ。もともと悪意のある、邪悪なといったネガティブな言葉がポジティブな意味で使われることがある。最近若者言葉で「やばい」が「超美味い」の意味で使われるのと似ている。
さて、”He’s soft” は、褒めているのでしょうか、けなしているのでしょうか? 文脈にもよるが「彼」の正体がぬいぐるみやペットでない限り、けなしている確率が高い。 スポーツ選手だったら心がすぐに折れるタイプで頼りない、soft in the head の短縮形ならお馬鹿さん、soft on … は~に甘すぎる。日本語のソフトとはちょっと印象が違うので気をつけたい。ソフトタッチも “He’s a soft touch.” と言うとだまされやすいお人好しのカモになってしまう。
(「毎日フォーラム 日本の選択」2009年12月号掲載)