生まれ変わるとしたら男か、女か。誰でも一度は考えてみたことがあるテーマだと思うが、私は昔から絶対女の方が良いと思っている派だ。人生は平等ではない。現代では男の方が圧倒的に自由度が低い。
特に欧米ではそれが顕著で「男子たるものかくあるべし」とばかりにいろいろと行動が制限されている。レディーファーストはその最たるものだろう。ドアを出入りするのも席に着くのも女性が先なので、私もしばらく出張などして譲ってもらうことに慣れてしまうと、帰国後エレベーターに乗ろうとするたびにおじさんとぶつかりそうになる。
意外に思われるかもしれないが英語にも女言葉があって lovely、sweet、”Oh, my goodness!” などは男性が言うとおねえ言葉っぽく聞こえてしまう。また “She’s my girl friend.” 「女友達よ」と女性が言うのは頻繁に耳にするが、男性は “He’s my boy friend.” とは言えない。言ったら特別な関係の間柄だと判断される。
ふつうの辞書には載っていない man date という言葉がある。スペースが空いているのは誤植ではない。アメリカ人男性がなぜか居心地の悪い気分になる男同士の時間の過ごし方を指す新語 neologism だ。2005年にニューヨーク・タイムズの日曜版で使われ話題になって以来、映画やドラマでも取り上げられている。たとえば男二人が公園を一緒にジョギングするのは平気だが、散歩だと微妙な空気になる。バーで食事をしながらビールやバーボンを飲むのはかまわないが、テーブルにキャンドルがともるレストランで向き合ってワインを飲むのは周りの目が気になる・・・。ゲイであることは決して悪いことではないが、ゲイでない男性 straight men は自分がゲイだと思われかねない行動を何としても避けなくてはならないものらしい。
女性同士なら何とも思わないし思われないのに、男とは不自由なものだ。
で、あなたは生まれ変わるとしたらどちらがいいですか?
(「毎日フォーラム 日本の選択」2010年9月号掲載)