What’s in a name? (ネーミングの落とし穴)

 ファストフードショップのバーガーキングにワッパーと呼ばれる妙な名前のハンバーガーがある。この一押し商品は普通のバーガーよりも大きく具がたっぷり。Whopperとは度肝を抜くほど大きいという意味なのだ。目玉が飛び出るような価格を the price tag of whopping 3 million yen のように使ったりもする。

 一度撤退した後、昨年暮れ日本に再上場して話題になったウェンディーズのベーコネーター Baconator の方がまだ分かりやすい。ベーコン入りハンバーガー界のターミネーターと言う意味を持たせたネーミングだという。パティやチーズに加えカリカリベーコンが挟んであって、いかにも若い男性向きのバーガーらしくボリュームがあってマッチョなイメージだ。

 経済がグローバル化すると企業名や製品名が他の国でどのように訳されたり受け止められたりするかにも気を配らなくてはならない。コカコーラが中国進出するにあたり発音だけで漢字を選んだら「蝋のオタマジャクシを噛め」か「蝋を詰めた雌の馬」になってしまったので、発音で妥協して可口可楽に落ち着いたというのは有名な話だ。

 日本産業界のグローバル化の雄、自動車も海外でのネーミングには気を使うようだ。ホンダのフィットはもともとフィッタで計画されていたが、スウェーデンやノルウェーのスラングで女性の隠し所の意味があることが分かり欧州では Honda Jazz として発売された。三菱パジェロもスペイン語圏では自分を慰める人の意味になってしまうので Montero と名前を変えている。

 子供の頃から慣れ親しんだカルピスも英語では cow piss としか聞こえないので北米では Calpico になった。コーヒーのお供クリープはクリームに「製品名に入れると売れる」と言われるp音を組み合わせた絶妙なネーミングだが、英語の creep と同じ発音なので、知り合いのアメリカ人はコーヒーを飲むたびに ”Give me the creeps!”「俺をぞっとさせてくれ!」と言って遊んでいる。

(「毎日フォーラム 日本の選択」2012年2月号掲載)

「What’s in a name? (ネーミングの落とし穴)」への2件のフィードバック

  1. Unknown
    こんにちは。
    友人の”さえこさん”は、アメリカ名を付けて仕事をしています。
    本名だと「Psycho」と聞き取られてしまうからだそうです。

  2. サイコさん
    いつも楽しいエピソードをありがとうございます。
    「大蛇!」も好きでしたが、こちらもなかなかですね。

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