2020年のオリンピック招致が決まり、翌日担当した会議では登壇する講演者の誰もがまずは東京を祝福した。何となく首都県全域がふわふわと浮き足立っている。景気の気は気持ちの気。みんなで浮かれてはしゃいだ方が元気が出るし、経済が活性化すれば復興財源も捻出しやすくなるに違いない(と信じたい。)
海外から多くの観光客が押し寄せることを見越して道路標識のローマ字表記が見直されるらしい。意識したことがなかったが、言われてみれば国会正門前の交差点に掲げられた標識には日本語の下にアルファベットで Kokkaiseimon と書いてある。道路案内としては分かりにくいのでいずれ The National Diet Main Gate と変更されるそうなのだが・・・。
デンマーク人のクライアントとタクシーで移動中、窓から見えた議事堂を指してあれは何だと聞くのであまり考えもせずに National Diet building だと答えたら National what? と聞き返された。ああ、しまった、議会を指すのに diet を使う国はもはやレア。あわてて parliament と言い換えたが、あれ?デンマークも diet じゃなかったっけ?昔勉強した時、辞書にそう載っていた気がしたが、あっさり否定されてしまった。
気になって調べてみたら1950年代に二院制だった議会が一院制になった時にその呼称も変更された模様。もともと神聖ローマ帝国の帝国議会を指した言葉が翻訳されて、日本には明治時代に当時影響の濃かったプロイセンから輸入された。そう言えば明治憲法下ではローマよろしく帝国議会だった。今ではドイツも含め欧州の議会は parliament が主流で米州ではカナダ以外で congress が多く使われている。
そんな中、予備知識無しで diet building と聞いた外国の皆さんは何を想像するだろう。摂食障害 eating disorder の治療施設とか、高タンパク high-protein ダイエット中のムキムキのお兄さん達が闊歩するジムとか思い描かれちゃったら・・・ちょっと、困る。
(「毎日フォーラム 日本の選択」2013年10月号掲載)