最近の会議で時々あるのが「感想や質問を#(ハッシュタグ)xxxでつぶやいてください」という主催者からの呼びかけだ。ツイッターの機能で同じ#のつぶやきをまとめて閲覧できるので、会場の人たちと声を出さずに気持ちを共有したり、主催者としてもアンケートを取ることなく反応を量ったり、パネルディスカッションの最中であればリアルタイムで質問を拾い上げたりできる。このようにメインのプレゼンテーション以外で行われるコミュニケーションをバックチャネルするという。他のオンライン手法でも構わない。
昔は back-channeling と言えば外交で裏ルートを使うこと意味したそうだ。交渉のためのメインのルート main channel があって、その裏に…ということなのだが、back には背後や裏と同時に逆方向に遡るという意味がある。そこで言語学的にはメインの話者が発話しているのに対して関心があることを示すために逆方向に発話をする「相槌」という意味になる。短い音や言葉で先を促すコミュニケーションの潤滑剤だ。
気を付けたいのは一つ覚えのように同じ相槌を繰り返していると気のない返事に聞こえてしまうことだ。 I see. や Is that so? ばかりを多用していると心ここにあらずの感が否めない。相手の話に合わせて、そうなんだ Oh, really? (上がり調子も下がり調子もあり)、そうだよね I know!(ぁぃのーぅと know に強調を置くのがコツ)、凄い Awesome! うそでしょ You’re kidding. などバリエーションを持たせたい。
ただしこれらは文脈さえ正しければどんな文章にも使えるある意味 generic な反応だ。ランチから戻った同僚から I tried unagi for the first time. と報告されたら Did you, really? と動詞と時制を合わせて応えると会話ががっちりかみ合う。The weather in Atami was gorgeous over the weekend. – Was it? Sachiko’s waiting for you. – Is she? 何を隠そうこれが間髪入れず自然にできるようになった時には英語のレベルが一段上がったような気分になったものだ。お試しあれ。
(「毎日フォーラム 日本の選択」2014年8月号掲載)