そんなつもりでは・・・

 ”Get out of here!” という大声が聞こえて、すわ、喧嘩か?と周りを見回してみても、目にはいるのは楽しそうに談笑する人たちばかり。いったい何が起こったのだろう。

 日本語でももちろんそうだが英語にも文字通りの意味と全く異なるニュアンスでも用いられる表現がある。相手の言ったことが聞き取れなくて繰り返して欲しい時に用いると習った “I beg your pardon?” は主語の I が消えてしまうくらい早口で言わないとその意味にならない。ゆっくり発音すると「もう一度言ってごらんなさい」つまり「なんて失礼な」になってしまう。

 逆に会話の途中で “Come again?” と言われたら、「もう一度言って」の意味。「また後で来てみて」と言われたと思って “All right.” なんて言いながらその場を立ち去ってしまったりすると、相手は何が気に障ったのかと大いに気をもむことだろう。

 昔、アメリカの sitcom コメディ・ドラマで “Excuse me!” を連発するキャラクターがいたのを覚えている。「エクスキュ~~~ズ・ミー」と憎たらしい調子で言い捨てるのは「悪うございましたね」といじけてみせる表現だった。また pardon と同じように相手の言葉にむっとしている時にも使う。会議の席で発言を求めて「すみません、ちょっといいですか」くらいのつもりで “Excuse me, chair.” などと言うと、それまでの議論に反論するか、議事進行に不満があるのかと勘ぐられる可能性がある。そういう時は “May I?” くらいが良い。

 廊下ですれ違いざまに同僚が “What’s up?” と言っても天井を見上げたりしてはいけない。「最近変わったことでもある?」と言う挨拶なので、たいして報告することも時間もなければ “Nothing much.” と答える。

 冒頭の “Get out of here!” も「出ていけ」ではない。半端じゃない朗報に「本当に?冗談じゃないの?」とか、のろけまくる新婚の同僚に「いい加減にしろよ、幸せな奴だな」と言う時の表現なのである。

(「毎日フォーラム 日本の選択」2010年10月号掲載)

「そんなつもりでは・・・」への1件のフィードバック

  1. 通訳の件
    初めまして。オフィスエムブレインズ萩原雅子と申します。本欄を利用しての突然のご連絡で大変失礼いたします。当方は通訳エージェントで加大使館の業務が多いのですが、先日大使館の方より日野峰子さんという方が登録されていればアレンジをして欲しいという依頼がございました。もし宜しければ一度ご連絡いただけますと大変ありがたく存じます。当方は03-3479-8090あるいは、m-brains@y6.dion.ne.jpです。なお、私は加商工会議所の理事を務めております。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です