仕事柄、比較的海外には良く行く方だがいまだに馴れないのがチップの習慣だ。部屋の枕の下に入れたり、レストランで15%を計算したりするのはまだ良いのだが、荷物を部屋まで運んでくれたりタクシーに積み込んでくれたりするベルボーイに渡すタイミングが難しくて、ついぎこちなくなる。堂々と渡せばよいのだろうが、請求されたわけでもない現金を手渡すことに、日本人特有の後ろめたさみたいなものがあるのだ。外国人向けの日本の旅行ガイドなどにも、Tipping チップについてと言う項目があって、日本人にチップを渡そうとすると、逆に侮辱 insult と受け取られかねないと説明されていたりする。そういう国民性なのだ。
ちなみに tips とは To Insure Prompt Service の頭字語 acronym だと言う説があるそうだが、これはどうやら後付け backronym らしい。本当の語源 etymology は曖昧だが、15世紀くらいに少々あやしげな人たちが使っていた隠語で、つんつんと人をつつくという意味だったのではないかと言われている。
つついて何をするのか? 秘密の情報を耳打ちするのだ。だから今でも tip-off たれ込みとか useful tips お役立ちヒント集のように、情報は情報でもちょっと色が付いた感じで使われる。また指だったり棒だったり、つつくものから始まってあらゆるものの先端部を表すようになったので the tip of the iceberg 氷山の一角にもなるし、舌の先 on the tip of my tongue に誰かの名前が載っていたら、どうしても思い出せなくて「ここまで出てるのに・・・」の意味になる。
さてチップに関する tips。レストランでクレジット払いの場合、金額を確かめてウェイターにカードを渡し、返ってきたカードと共に渡されるレシート2枚にチップと合計額を書き入れてサインし、1枚は店に残しもう1枚は控えとして持って返る。ホテルのバーなどでは請求額は部屋につけてもらって、チップの分は現金でテーブルの上に残すとスマートだし手持ちの小銭も減らせる。
(「毎日フォーラム 日本の選択」2012年3月号掲載)
Unknown
こんにちは。
Tipはそういう意味があるんですねぇ。
レストランへ行く時、家族連れだとこのTipがかなり痛いです。
軽く一人分くらいにはなりますので。