人間の骨の数は206個前後だそうだが、猫の場合、230個から多い個体では250個もあり、平均は244個。どおりでドーナツよろしく見事に丸くなったり、絞ったぞうきんみたいに体をねじって平気で寝ているはずだ。20個も違うのは主に指としっぽの差だと言う。
指の骨が多いのは「かんじき猫」と言われたりする多指症の猫、ヘミングウェイの猫とも呼ばれる。ある船長から譲り受けた前足に指が6本(普通は5本)ある猫を文豪はこよなく愛していた。フロリダ州キーウェストにあるヘミングウェイ博物館には今もその子孫が数多く暮らし、「猫屋敷」状態になっているらしい。日本では雄の三毛猫(大変希少)が船の守り神だったが、欧米ではマストを上る能力に長けネズミをよく捕る6本指の猫を好んで船に乗せたという説がある。ちなみに多指症は優性遺伝なので、親猫が片方でもヘミングウェイ・キャットだと半分以上の確率で子供達もかんじきをはいて生まれてくるわけだ。
しっぽが短かったりお団子みたいだったり、あるいはくきっと曲がっている鍵しっぽだったりするのが尾曲がり猫だ。その割合は日本国内でも地域差が大きいらしい。フィールドワークで長年それを調べている学者さんの話をテレビで見たことがある。海外で人気のジャパニーズ・ボブテイルも尾曲がり猫の一種。日本は家が狭いので猫のしっぽも遠慮をして長く伸びない、という落語のまくらをどこかで聞いた気がするが、長く伸びるのも途中でくるくる巻いてしまってボブテイルになるのも遺伝による先天的なものだ。うちの2匹はすらりとまっすぐな長いしっぽをしていて、どうやらその分、骨の数が多いと言うことらしい。
飼い猫というやつはわざわざ人間の動線上に長々と寝てみたり、台所や洗面所に立つ飼い主のすぐ後ろにこっそり座り込んだり、無防備なことこの上ない。なのに、うっかりそのしっぽを踏んだりしようものなら「いたい~っっ!」とばかりに猛然と抗議されることになる。「だからちゃんとしっぽを巻いて座りなさいって言ってるでしょ!」なんていう飼い主の小言などどこ吹く風だ。結局、なで回したりグルーミングをしたり、餌に削り節をふってやったり、ご機嫌取りをさせられる羽目になるのだから割に合わない。
タラは子供の時から体よりもしっぽが長く、獣医さんから「あらまあ、立派なしっぽ」と感心されるほどだったが、その後しっぽとのバランスを取るかのように胴体の方も長~く伸びてきた。体重は5キロほどだが体長は7キロ超えのポンと変わらない。どうも我が家は猫が巨大化する傾向にあるらしくて困る。
ちなみにキジトラ白のポンのしっぽはくっきりとした輪切り模様が入っているが、タラは体の方ではきれいに分かれている三色が、しっぽではぐしゃぐしゃに混じり合ったパーティー・カラーになっている。