「AIGが一大事~・リーマン傲慢」?

 今回の金融危機の引き金となったリーマンやAIGの元経営陣が得ていたとてつもない報酬は、庶民からは3桁three orders of magnitudeはずれた感覚だ。短期的に利益を上げたCEOが多額の報酬を受け取ることを容認してきた米国の投資家だが、今年の株主総会の時期に話題になったのがsay-on-pay。CEOの報酬に株主のYes/Noを問おうというもの。聞いてみるだけで拘束力は無いが、英国やオーストラリアなどでは法制化されある程度効果を挙げていると言う。

 さて、お気づきのとおりsayとpay、rhyme韻を踏んでいる。英語にはこういう言葉遊びが結構多くて、walk the talk有言実行、shop till you drop買いだおれ(?)などは良く耳にするし、毒をもって毒を制すfight fire with fireは頭韻のパターン。最近ではtech wreckネットバブルの崩壊とか、BRICsがhero to zeroになるのでは、という表現も聞いた。人間は同じ音、似た音が重なるのを音楽を聴くように心地よいと感じる。西洋、中国の詩歌で押韻が発達したゆえんだ。

 一方日本では七五調というリズムで気持ちよさを追求する方向を選んだ。残念ながら音を合わせる言葉遊びはあまり高尚なものとは見なされず、地口、駄洒落、はては親父ギャグとまで呼ばれ、引くだの寒いだの、聞かされると脳の活動が一旦停止するだの散々に言われてきたが、庶民はめげない。浅草伝法院通りには脱力系の地口行灯が並び、恵比寿大黒が「恵比寿大根食う」になったり「飛んで湯に入る夏の武士」が描かれたりしているし、CMの「バインダーが無い、頼めばいいんだ~」なんてなかなかよく出来ている。「舌切り雀」の地口「着たきり雀」は広辞苑に収載されるほど出世した。日本語のラップが受けているのも韻を面白がる素養があるからだ。駄洒落大好きなgagster、jokesterの皆さんにも高度な言葉遊びなのだと自信を持っていただきたい。

 ただし、お願いですから通訳させようとは思わないでください。

(「毎日フォーラム 日本の選択」2008年11月号掲載)

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