先住猫懐柔大作戦

犬は餌を与えすぎると全部食べてしまってお腹をこわすことがあるので飼い主が気をつけてやる必要があるが、猫は満腹中枢があるので自分で食べる量をコントロールすることが出来る。そこで、カリカリと呼ばれるドライフードになれている猫なら、2泊くらいはお留守番をすることが可能だ。

ポンも時々お留守番をさせられていたが、やはり1匹では寂しいだろうともう1匹もらうことにした。ポンはキジトラ白なので次は三毛猫が欲しいと思っていたら獣医さんのところに張り紙が出た。子猫が4匹生まれて飼い猫が10匹を超えてしまったので、引き取り手を探しているらしい。3匹は茶トラだったが1匹が念願の三毛だったのでさっそく連絡を取ってもらいに行った。それがタラだ。

新しい猫を家族に加える時一番心配なのが先住猫との相性だ。室内飼いのポンは里親探しの時以来、他の猫とはあまり交流がないまま4歳半になっていた。ただおっとりした性格なのでそれほど心配もないとは思っていた。東京近郊の町で小さな一戸建てに住んでいた頃、どこかの猫がいきなり家の中に入り込んできた事があったのだが、どう対応して良いか分からずに立ちすくむような猫だったからだ。もう少ししっかり自分のテリトリーを守れ、と飼い主からハッパをかけられ、「え~、でも・・・」と尻込みするような草食系男子だ。(いや、猫はどう転んでも肉食だから、と言うつっこみは聞こえないことにする。)

初めてタラを見たポンはやっぱりまず固まった。いきなり目の前に現れてにゃーにゃー鳴いている小さいものが何なのか分からずパニックしている。タラがかまわず近づいていくとようやく我に返ったように「シャー!」っと威嚇したが、人間から見てもなんだか腰が引けていて迫力に欠ける。一応礼儀を通そうと引き下がったタラだが、さすがに大家族の家に生まれた猫だ、大人猫は見慣れていて怖くもない。子猫だからかまって欲しいし遊んで欲しいし可愛がって欲しい、そんな気持ち一直線で、ありとあらゆるアプローチを始めた。

正面から行って威嚇されたら後ろから飛びかかってみる。びっくりして瓶洗いブラシのようにふくらませたポンのしっぽにじゃれてみる。うるさそうに逃げ出そうとするポンのお腹の下を猛スピードで通り抜けてみる・・・。丸一日見ていても飽きないだろうと思う多彩な攻撃だったが、こちらも仕事がある。後ろ髪を引かれる思いで猫猫大騒動の現場を後にしたものだ。

わずか二日後、ピラミッド型をした小さな猫用テントの中で、2匹の猫ははぴったり並んで香箱を作っていた。タラはあっという間にみごとにポンを攻略したのである。

(香箱を作る:猫用語で両手を織り込んで座り、ティッシュの箱に頭としっぽがついたような体勢を取ること。安心・リラックスの姿勢。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です